島根県・浜田市の自然素材・伝統木構法・ひとに優しい家造りにこだわる田原建築設計事務所


伝統木構法による建築

 私は、2002年から2003年にかけての一年間、伝統木構造の会の会長である増田一眞先生に、「伝統木構法・限界耐力計算法」について学んだ。その後、私も会員となり、勉強しながら、この地にも何とか伝統木構造の建物とそれを伝える技を遺す道を探っているところだ。
 まず、先生の言葉を会のパンフより紹介する。

 「伝統木造建築は、日本民族の誇るべき文化遺産である。それは、自然と調和し、環境を引き立て、街並みを美しくしてきた。それは丈夫で永もちして美しいうえに、住みよく生活に親しみ、人々の心と体に優しい建築であり、そのエコロジー性と相携えて、未来にまでその生命力を貫く。歴代の大工棟梁たちは実に永い歳月を重ねて、世界に誇るに足りる木構造と木の芸術を創造した。我々は、先達の遺した優れた文化遺産を未来に向けて更に発展させることを自らの義務と課し、伝統の継承と発展を進める意志を表明する。芸術性と科学性の両立は文化遺産としての価値を形成する根源である。伝統の知恵に学び、その精髄を守りながらも、つねに現状を乗り越える創造への努力を積み重ねるときにのみ、伝統の眞の継承と発展が成立する、と信ずる。
                                       2004年春 伝統木構造の会
                                               会長 増田一眞    」
 建築に携わる者として、一語、一語、心に響く。
 関東大震災以降、筋違い(すじかい)を耐力壁として建物の壁面に入れるという考えが採用され、現在では、この筋違いと金物を使った建物が日本中を席巻するようになった。千年以上にわたり先達が築いてきた日本の伝統工法をこのまま捨て去ってしまっていいのだろうか。
 以下、11月19・20日の二日間、伝統木構造の会の総会に参加して勉強してきた事をまとめておく。

 

◆ 日本の伝統建築物の歴史
 奈良時代

  (自立柱)
    大きな柱を使う構造
             ‖
     転倒しない(安定性・復元力)
       
      
 ・ 唐招提寺
      
 ・ 法隆寺     他


 しかし、次第に、材料となる巨材を得ることが困難になっていった。


 鎌倉時代

   貫 構造
   筋違い構造
         ‖
    小さな部材を近結する事により
    安定性を得る



 筋違い構造は白壁に合わない・美しくないという事で、貫 構造の建物が残り、筋違いは、小屋面で、雲筋違いという形で残った。
 
貫を使った建物 筋違いを使った建物


 安土桃山時代

   屋根面の小屋組に
             貫 構造


 秀吉の築いた伏見城が壊れるという大地震に見舞われた。これ以降、屋根面の小屋組を貫でかためるようになった。


 関東大震災

 明治時代になり、西洋建築がはいってきた。
 震災以降、日本の伝統的工法は遅れた考え方であると否定され、西洋のトラスの考え方を応用した筋違い構造が主流になり、現在のような在来木造になってしまった。


◆ 伝統木構法の耐力性能実証実験
 伝統的建築物がどんなに耐力があるものか実証する実験がおこなわれた。
伝統木構法の強度を明らかにするために、実物大 2間 × 2間 , 土塗り壁, 貫等を用いた試験体を製作して、実験が行われた


建築基準法では、筋違いは1/30Rad.の加力で倒壊すると言われているが、後ろに土壁、前面に差しがもい等で拘束された曲げ系の柱という、バランスのくずれたこの試験体でも、1/7.5Rad.まで加力した時初めて、柱が差しがもいとの出会い部で折れた。いかに粘り強いかがよく分かる実験であった。
そのとき、土壁には亀裂が入ったが、梁は胴栓が折れただけであった。
この試験体は倒壊していないので、引き戻すとまた元の形に戻る。次回、復元した建物の耐力確認実験が行われるそうだ。
伝統木構法の利点は、復元可能という事である。このことは、これからの地球環境を考える上で大変重要な要素となる。
次回の実験とその結果を楽しみにしている。
 
復元した建物の耐力確認実験
 4月27日、「伝統木構造の会」の公開実験に参加してきた。
 昨年秋の実験の続き。修復した構造体は、どこまで耐力があるのかを探る実験。
 この試験体は、前回の実験で、1/7.5Rad.の加圧によって土壁に亀裂が入り、中央の柱が折れた。

 今回、柱は  ちぎり  という手法で
 壁は  落ちた土を集めて塗りなおして 実験が行われた。


 
 実験後の3枚の写真は、1/7.5Rad.の加圧の時の状態。
 修復後の試験体も倒壊しなかった。
 修復した建物も十分耐力があることが証明された。
 伝統木構法は再利用可能なエコ構法であることが確認できた。

     
  
 
サマーセミナーIN関川(8月5・6日)

伝統木構造の会のサマーセミナーに参加した。
今年は、新潟県 下越地方 米沢街道沿いの関川村で開催された。
関川村には、渡邉邸を中心とする江戸の街並みが残っている。
関川村の街並みは、撞木造りという伝統構法を基本としてつくられている。
今回のセミナーの目的は
  ・ 村民の皆さんへのきっかけづくり
          関川の財産 撞木造りの住宅価値の見直し

  ・ 伝統木構造の会 会員の 研修
          伝統木構法と街並み保存について考える
                                         
伝統木構造を手がける大工による 木組みの技の実演や
石置木羽葺職人による 木羽板矧(は)ぎの実演
講演やパネルセッション
全国から集まった会員からの情報    など  

興味深い情報をシャワーのごとく浴び
自分の持っている課題に対するヒントを数多くうることができ 
刺激的な セミナーだった。

渡邉邸を見学したときの写真を紹介する。
渡邉邸は、築200年を経た 撞木造りの建物。
撞木(しゅもく)とはお坊さんが鐘を打ち鳴らす棒のこと。街道沿いに平入りの平面をもちT型に奥まった空間を有しているので、こう呼ばれる。街道側に重厚で美しい建物の正面があり、渡邉邸・津野邸・佐藤邸と並ぶ景観には圧倒される。
茶の間列や通り土間を中心に見学した。

茶の間には囲炉裏がきってあり、常に、まきがたかれる。暖をとったり物を乾燥したりの他に、けむりで梁や柱や屋根を守るという大事な役目がある。

黒くどっしりとした梁。
曲がり材が用いられている。その方が、材も強く永もちするそうだ。また、構造をそのまま見せることで、点検・保守が容易 建物の寿命を延ばすことになり、なにより、大工たちは腕を磨いたそうだ。
渡邉邸の屋根は、
石置木羽葺き(右写真)。
まるく 優しい色合いの石で木羽板をおさえた屋根は、その面積の広さにもかかわらず威圧感がなく、屋敷の緑に溶け込んでいる。北欧の景色にも似て、とても印象的。
屋根職人は、80歳を超えた方が一人。4年で一回りというローテーションで葺き替え続けているそうだ。後継者の養成の急務を訴えておられた。
津野邸・佐藤邸では、今も生活の場として住み続けておられる。茅葺屋根の葺き替え 梁や柱の手入れ などの手間や費用、生活における不便・・・・・・
江戸の街並みを保存していく事はたいへんなことだ。
でも、自然素材だけで 人間の知恵と技を駆使して 造り 守られてきた建物の中で感じた ここちよい風の動きややすらぎは、忘れられない。
また 増田先生は 講義の中で
  「・・・木は、乾燥に伴って狂いを生じる。
   一世代住み終わると木の暴れが納まり
   はじめて完全材に変化する。
   木の自然劣化は千年以上だから
   百年経って完全材になり
   ここから本当の木になる。
   伝統木構法では、解体しても
   移築・転用・再利用してきた。」と、話された。
 人にも自然環境にも優しい伝統木構法。セミナーをきっかけに撞木造りの街並み保存がすすむことを願っている。

塩尻Mプロジェクト耐力実験参加 (2007.05.20)

5月20日
長野県塩尻市で実施された 新伝統構法実物建物による構造耐力実験に参加した。
新築中の建物を使って行われる たいへん貴重な実験である。全国から 100名以上が参加した。
今回の実験は 伝統木構造の会 
          工学院大学工学部建築学科宮澤研究室
          (有)三浦創建   の共催で行われた。
実験方法は 試験体に正負漸増繰り返し加力する静的加力実験。中地震程度の力が加えられた。目に見える変化は確認できないが、時折 部材のきしむ音が聞こえ しっかり 耐えていることを感じることができた。

今回の参加には もう一つ 目的があった。
構造がむき出しの状態の現場があり、そこに その道の達人たちがたくさん集まってくる。現在 私が抱えている問題をぶつけ 解決の糸口を探る絶好の機会と楽しみにしていたのだ。
期待通り 達人たちは 私の疑問に 気軽に答えてくださり 失敗談には 示唆を頂いた。
木組みも とても 参考になった。
今回もまた 収穫の多い研修となった。 
                                   


E−ディフェンス公開実験 (2008.11.28)


 上の写真 手ブレではない
 11月28日
 兵庫耐震工学研究センターで行われた 伝統的木造軸組構法住宅の振動台実験を見学した
 この施設
 『実大三次元振動破壊実験施設 (E-Defense)』と言う
 下の写真 実験棟の外観(左) 内部振動台(右)からもお分かりいただけると思うが その規模の大きさに圧倒される
 国内数箇所ある施設の中でも 最大級の性能を有するそうだ

 この施設の主要部分は 実際の地震と同じ複雑な三次元の揺れをつくり出す15m×20mの振動台 その上に最大1,200tの構造物を載せ 阪神・淡路大地震クラス(震度7)の地震を再現できるのだそうだ

 今回 実験を行う構造物は 
   都会タイプの 伝統的木造軸組構法住宅
   ・ 土壁
   ・ 柱 150mm角
   ・ 三方差し
   ・ 600ピッチで貫 (貫断面 27mm×105mm )
   ・ 建物の平面形状としては変形(壁が偏っている)                                                                     主催者の 「倒壊するだろう」との予想のもとに 阪神・淡路大地震と同等の
振波が加えられた

 しかし 壁に亀裂が入りこそすれ 瓦1枚落ちることなく 実験は終わった  
 実際に起こりうる三次元の地震波にたいしても 
伝統的軸組構法の強さが証明された 
今回の公開実験の映像は 後日ホームページ上に公開されるそうだ

     URL:http://howtec.or.jp/
 
では なぜ このような大掛かりな実験をしなければならないか

 今 伝統木造は その技術の継承において危機に瀕している            
 伝統木造は 古来 先達の知恵と技によって確立され 強さも経験的には実証されているが 数字として 証明するものがなく 伝統木造の建築には 建築基準法が 厚い壁となってたちはだかっている
 今回の実験の大きな目的は 建築基準法を見直し 伝統木造の建築にも適用できるものにするためのデータづくりにあるのだ
 最近 すまいづくりについて 省エネやエコの観点から 
 
『200年住宅で むかしながらのシンプルライフ』

が関心をよんでいる
 いまこそ 伝統木造復活のチャンスであろう
 今回の実験結果は 大きな前進だっただろう






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